スタッフコラム

スタッフコラム

Staff column
2020.06.15
膝前十字靭帯損傷(ACL損傷)のリハビリテーション

今回はスポーツ外傷として代表的な『膝前十字靭帯損傷(以下ACL損傷)』とはどうゆう疾患であるのか、そして当院で提供しているリハビリの一部をご紹介します。

1.どのような障害か(病態・原因、症状)

<病態>

膝には4本の靭帯があり関節の動きをコントロールしています。それらが耐えられる以上の力が加わると靭帯が切れます。ACLは膝の関節の中にあるので、切れるとそこからの出血が関節にたまるのが特徴です。

 

<原因>

ほとんどがスポーツ活動中に起こります。膝の外側からタックルされるなど、相手選手との激しい衝突などによって受傷することもありますが、ジャンプの着地や急激な方向転換で誰ともぶつかっていないのに切れてしまうことが多いです。

けがをした瞬間には「ポキッ」「ゴリッ」などの音を伴うことがあります。

受傷後は関節の中に血が溜まり、痛みや腫れなどの炎症症状が生じます。さらに膝の曲げ伸ばしの動きが悪くなったり、力が入りにくいなどの機能障害を引き起こします。

受傷直後は痛みで動けないことがあっても、時間の経過とともに歩行や運動が可能となることもあります。治療を受けることなく時間を経過し、慢性期に移行した場合ではジャンプの着地、切り返し、ストップ動作で膝崩れが起こります。

2.診断、治療

<診断>

診察(問診や徒手検査)、MRIによる画像診断

 

<治療>

損傷したACLはギプス固定などでは治りません。損傷後1ヵ月ほどで痛みはとれ、日常生活には支障がなくなることがほとんどですが、それは損傷に伴う炎症が落ち着いたのにすぎず、靭帯は切れたままです。スポーツを行わない人ではそのままの状態でも支障がない場合もありますが、スポーツの続行を希望する人には手術を勧めます。近くの腱を採取して靭帯を再建するのが一般的です。

 

3.リハビリテーションプログラム

<再建術後のリハビリテーション>

靭帯再建術後のリハビリテーションの目的:膝関節の可動域、安定性、筋力を総合的に獲得していきます。

*当院では手術は行なっていないため、提携している病院に紹介して手術をしていただく事になります。執刀した主治医により術後のプロトコール(リハビリテーションの流れ)は違います。下記には一ACL損傷の般的な術後のプロトコールを紹介します。

 

<手術直後~3週>

膝は装具による固定を行います。原則として足に体重をかけず、リハビリでは再建靭帯へ負荷がかかり過ぎないように膝関節の可動域運動や筋力訓練を行っていきます。

その他、足首の運動を行うことで循環障害予防に努めたり、股関節まわりや体幹の筋力訓練も合わせて指導していきます。

リハビリ後はアイシングで患部を冷やします。

 

             

 ヒールスライド              膝蓋骨マッサージ

太ももを保持し、踵を滑らせながら       膝のお皿を上下左右に動かします。

膝を曲げていきます。

足関節エクササイズ

足首の上下運動を行います。

クアドセッティング

タオルを膝で押しつぶします

<術後3~12週>

初期にはリハビリ時以外は装具での固定を継続し、その後は基本的には終日装具を外します。手術後3週から段階的に体重をかけていきます。

全荷重が可能となったら可動域運動、筋力強化に加えて、ステップやジョギングなどのスポーツ動作開始に向けて動作時の姿勢改善を行います。また、競技の特性に応じて患部外トレーニングも取り入れます。

スクワット

ツイスト        ニーベントウォーク

 

<12週以後>

可動域運動は積極的に行います。筋力強化も回数や負荷を増加させて膝の動作時の安定性を向上させます。

この時期には競技復帰に向けてジョギング、方向転換動作、ランニング、ジャンプ動作、台からのジャンプ着地などの動作トレーニングも開始していきます。

 

【保存療法時のリハビリテーション】

靭帯損傷後は膝に力が入りにくいことがあったり、膝崩れなどの不安定性が残存しやすいため、半月板損傷や軟骨損傷など二次的な障害が生じないように、不適切な姿勢の修正や筋力バランスの改善などに重点を置きリハビリテーションを行います。

受傷後は3ヵ月間の装具固定を行います。荷重や可動域運動は痛みのない範囲から始めていきます。筋力訓練ではACL再建術後に準じて行っていきますが、靭帯にストレスが加わらないように十分注意しながら進めていきます。

 

 

【最後に】

患者様によって、機能障害(関節の動きが悪くなっている、筋力が発揮できないなど)を起こしている部位は様々であり、個人差があります。

このページで紹介しているリハビリテーションプログラムのみでは症状が改善しない場合があります。症状が改善せずお困りの方は是非ご受診していただき、リハビリテーションを受けて頂くことをお勧めいたします。

当院のリハビリテーションでは患者様一人一人をセラピストが丁寧に評価をして患者様にあった治療プログラムを作成いたします。

 

文責:リハビリテーション科 理学療法士 小林 光希

 

引用:

1)公益社団法人 日本整形外科学会 パンフレット「スポーツ損傷シリーズ6 膝前十字靭帯損傷」

2)スポーツ障害のリハビリテーション

3)スポーツ外傷・障害に対する術後のリハビリテーション