上腕骨外側上顆炎(テニス肘)は肘周辺に生じる痛みの代表的疾患で、テニスやゴルフなどのスポーツ障害だけではなく、物を持ち上げたり、手を捻ったりする動作で肘の外側が痛み、手を伸ばして物を持てなくなる病気です。
■肘関節の仕組みと上腕骨外側上顆炎
手首や指を伸ばす筋肉、腱は肘の外側に付着しています。この筋群の引っ張る力による慢性的なストレスや小さな損傷が原因で、この部分で炎症を起こした病気です。テニスによってよく起こるので「テニス肘」と呼ばれます。
しかし、テニスをしない中年の方にも多く発生するので「使いすぎ症候群」と考えられます。
症状は?
肘の痛みにとどまらない場合も多く、前腕や上腕にまで痛みが広がる場合もあります。また、痛みのため、握力の低下を訴える場合もあります。
診断は?
肘の外側の痛みを、簡単な誘発テストでチェックします。
①手関節伸展テスト②チェアーテスト③中指伸展テストなどがあり、いずれの検査でも、肘の外側から前腕にかけて痛みが誘発されたら、上腕骨外側上顆炎と診断します。X線検査にて、伸筋腱が付着している外側上顆部の骨の不整像や骨棘(骨のとげ)、エコー検査にて腱の肥厚、関節裂隙に滑膜の炎症を認めることがあります。
治療は?
上腕骨外側上顆炎の治療には急性期、亜急性期、回復期という病期に分け、痛みの程度に合わせて、行うことが重要です。
急性期
患部の疼痛緩和を目的として安静を最優先させます。日常生活の動作指導、局所ブロック、アイシング、テニスバンド、理学療法をする場合は、肩関節のコンディショニングなどを行います。
亜急性期
日常生活において強い痛みが出現しなくなった時期にホットパックや温熱モードの超音波などの物理療法、柔軟性の向上を目的に前腕のストレッチを行います。
回復期
上記に加え、炎症の再燃に注意しながら伸筋群の筋力増強運動を行います。
■最後に
上腕骨外側上顆炎などの腱の付着部炎にはストレッチが推奨されています。予防を目的に行うのは良いですが、急性発症時に行うと逆に痛みを誘発するお恐れがあります。
症状がある時は受診して頂き、病期やどの部分がどの程度損傷されているのかを診断して頂くことをお勧めします。
文責:柔道整復師 杉野壽哉
引用
1)坪田貞子 臨床ハンドセラピー
2)林 典雄 運動器疾患の機能解剖学に基づく評価と解釈