スタッフコラム

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Staff column
2020.04.17
『鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)』

このコラムでは当院で多い疾患に対してのリハビリテーションプログラムをご紹介します。

『鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)』

1.どのような障害か(病態・原因、症状)

<病態>

鼠径部痛症候群(Groin Pain Syndrome)とは、鼠径部や股関節(付け根)周辺に明らかな疾患がないにも関わらず、運動時に鼠径部周辺にさまざまな痛みを引き起こすと言われています。

<原因>

下肢の外傷後または体幹から股関節にかけてスポーツによる使い過ぎ(キック動作やランニングやなどの繰り返しの運動)などによって筋力低下や柔軟性低下、拘縮(関節が動かしにくくなる)が起こります。それが鼠径部周辺の痛みとなると考えられています。

<症状>

圧痛(押して痛い)、運動痛、時に鼠径部や大腿内側(内転筋付着部)、下腹部にまで放散する疼痛が特徴です(図1)。慢性化すると鼠径部が常に痛みます。特に下肢を伸展(後ろに引く)、外転(足を開く)動作で誘発されやすく、股関節の可動域制限、筋力低下が見られます。

図1 鼠径部周辺の疼痛領域(文献4より引用)

 

好発しやすいスポーツ:サッカーが好発で大半を占め、陸上競技中・長距離、ラグビー、ホッケー、ウェイトリフティングなどで20歳前後の男子選手に多く発生します。

2.診断、治療

診断:診察、問診、X線、など

治療:

安静にすることで痛みが治まることもありますが、ほとんどのケースで何らかの機能障害が起こっていることが考えられます。

そのため、全身の問題点として

・可動性(筋肉や関節の柔軟性)

・安定性(体幹や下肢の筋力)

・協調性(全身の動きが効果的に連動すること)

を評価した上で、機能障害を修正するリハビリテーションを行います。

疼痛の慢性化や鼠径部痛の原因病態が明らかに鑑別された際は、手術を勧められることもあります。

 

3.リハビリテーションプログラム

<痛みの軽減>

痛みを起こしている部分を推定して、筋肉や関節などの硬さを取り、痛みの軽減を図っていきます。

<可動性と安定性の改善>

股関節周囲(付け根)と腰椎(腰周り)の可動性と安定性を改善することが重要です。具体的にはストレッチやエクササイズを行い、筋肉の滑走性(動かしやすさ)や骨盤や股関節の位置関係を整えいきます。

また体幹や股関節周囲(付け根付近)の筋出力機能(力の出しやすさ)や安定性の改善も行い、次の段階で行う協調運動に備えていきます。

 

可動性と安定性が改善したかどうかのチェックポイントの一部として、図1、2の動きをチェックします。

図1足上げ抵抗運動チェック            図2フロントブリッジ

(対側片手片足同時挙上)

 

<協調運動の改善>

股関節のだけに負担が集中しないようにするために、動きの修正を図っていきます。

上肢(腕)や体幹からの動きと連動して反対側の下肢(足)を動かせる協調運動を指導します。

図3クロスモーションスイング

 

【最後に】

患者様によって、機能障害(関節の動きが悪くなっている、筋力が発揮できないなど)を起こしている部位は様々であり、個人差があります。

このページで紹介しているリハビリテーションプログラムのみでは症状が改善しない場合があります。症状が改善せずにお困りの方は是非ご受診していただき、リハビリテーションを受けていただくことをお勧めいたします。

当院のリハビリテーションでは患者様一人一人をセラピストが丁寧に評価をして患者様にあった治療プログラムを作成いたします。

 

文責:リハビリテーション科 理学療法士 原 良佑

 

引用:

1)鈴川仁人ほか:スポーツリハビリテーションの臨床.メディカル•サイエンス•インターナショナル.2019

2)仁賀定雄:グロインペイン症候群を持つアスリートの競技復帰. 臨床スポーツ医学36:836–841,2019

3)公益社団法人 日本整形外科学会 パンフレット「スポーツ損傷シリーズ11 鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)」

4)仁賀定雄:『Groin pain syndrome』